第1話、In a mellow tone by Tony Bennett

今は日本でも見られるAmerican Idol というテレビ番組がありますが、約半年間に何千人もの応募者から審査を続け、最後に歌手の一位を決めます。最後の10人は放映後アメリカ全土をバスで回ってショーを開きます。カルフォルニアのサンノセで私も見に行きました。高視聴率をあげているこの番組からプロの歌手になった人も大勢います。



番組では最後の数人になると有名歌手が一人一人に指導してくれるのですが、3年ほど前トニーベネットが年の功を発揮したなかなか良い歌の指導をしました。その後ゲストとして歌うというので、若者の声量のある声に慣れた聴衆の中で声がだいぶ出なくなったトニーが歌ったらみっともないのではないかなあ、と心配しました。しかし、わたしの密かな心配にも反してトニーの歌は、声量や技量だけではなく歌う心が大事だと思わせるおだやかで聞いている人を楽しませてくれるものでした。

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最近80才を過ぎてなお大活躍をみせているトニーベネットが2000年に歌ったIn a mellowtoneをYou Tubeでごらんになったでしょうか。



「音楽は一人では出来ないもので、今ここにすばらしいアーティストの方々がステージにいらっしゃいますのでこれから皆さんに小さなジャムセッションをお送りしたいと思いますがいかがでしょうか。」という説明の後、ワーっという観衆の声とともにIn a mellow toneが始まります。



トニーは小さい声で歌い始めると客席から拍手がわき起こり、それを押さえるように人差し指を口にあてて静かにするように促します。あくまでも押さえた声でアーティストと一体になってゆずりあったようなステージです。


最初にわたしが感じたことは、画家として彼の絵はよく見かけるようになったが、もう歌うのは無理でしょうと思っていた頃ですから、声にボリュームがない、曖昧に歌っていると批判しました。



In a mellow tone という歌は「なんぞや?」と考えた時に色々な意味があると思いますが、大人のソフトな音色で、というのもその一つとなると思います。



激しく強く一心不乱に生きた若い時代を越え、酸いも甘いも噛み分けた熟年のトニーが「そんなにガンバらなくっても良いよ、軽く楽しくリズムに乗ろう」と楽に歌う。バンドのアーティストたちの一人一人の演奏に耳を傾け、即興で他の曲を挿入していたりするのを楽しむ、トニーは一歩引いているのに存在感がある。すごい。



まろやかな成熟したトニーの良さは、声のボリュームよりもしっかりと諭すように歌い、精一杯ではなく余裕で楽しむ。こんなリラックスした歌い方があったのだ。目から鱗です。もう枯れた魅力を出す年齢に達した自分を反省すると共にゆったりと歌う良さを考えなければいけないと思いました。



  メローな音色につつまれて、のんびりといこう
     ひとりじゃないよ、仲間がいるよ
       今日一日、全部がOKだよ、この歌でうまくいく
         メローに生きることだね

   つらい苦しいというあなた ちょっと手をぬいてリラックス
     思いをちゃんと通して、笑って楽しもう
       喜びはどこかにあるよ
         メローな音色につつまれて

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深澤先生がお薦めのトニーベネットの最新CDは85才のトニーが17人の歌手とデュエットするという話題作で10月のビルボード第一位となり、生存する歌手で一位を取った最年長歌手という栄光に輝いています。トニーが長い歌手生活で一位を取ったのは初めてだそうです。



そのCDの中で、Amy WinehouseとBody & Soulをデュエットしています。録音はこの3月に行われ、Amyは「夢が叶った。孫の代まで語り次ぐ」と喜びを露にしました。ところが7月Amyはアルコールの過剰摂取で27才の若さで急死しました。麻薬とアルコール中毒だったと言われています。70年代にトニー自身がどこからも相手にされず干されていた時、麻薬中毒になり再起不能状態にあったこともあり、「Amyの状態を知っていれば、Slow downしなさいと言ってあげられたのに」と悔いているそうです。

   「In a mellow toneを悩み多き若い人たちに捧げます」

by M.S.

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